1.押さえておきたい専門用語
株式会社と違って見慣れない用語が多いので最初にご確認ください。
- 社員
-
解説
出資者(及び役員)の地位を表す言葉。
合同会社は出資者と役員が同じになるため、権限は株式会社の「取締役」と「株主」を合わせたもの。 - 持分会社
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解説
会社法上の法人格の区分で、合同会社・合資会社・合名会社の3つが該当する。
ほかの区分として「株式会社」が存在する。
2.合同会社の概要と特徴

概要
必要な人数 | 1人~ |
---|---|
資本金 | 1円~ |
設立費用 | 8万円程度~ |
所要日数 | 7日~ |
決算公告 | 不要(任意) |
議決権 (通常) |
1人1票 (定款で自由に取り決め可能) |
方針決定の条件 (通常) |
社員の過半数の賛成 (定款で自由に取り決め可能) |
特徴
- 定款自治が認められている
-
ざっくり言うと
株式会社と比べて会社のルールを柔軟に決められる。
解説もともとは2006年に施行された「新会社法」で企業の裁量の範囲が大幅に拡大したことを指す言葉。
合同会社の設立に関係する話では、合同会社が株式会社に比べて会社の仕組みを自由に設計できるというメリットを指すことが多い。合同会社だとこんなことが可能!
Aさん・Bさん・Cさんの3人で100万円ずつ出資して設立(=全員が社員に就任)したとしても…
- 意思決定はAさんが1人で行う
- 配当の割合はAさん5割・Bさん2割・Cさん3割
- 定款の変更は社員全員の同意が必要
- 持分(=社員の地位)の譲渡は社員全員の同意が必要
- 所有と経営が一体化している
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ざっくり言うと
出資者=経営者である。
出資した人 経営する人 株式会社 株主 取締役 合同会社 社員 社員 つまり...合同会社では出資した人=経営者となる。
なお、定款に定めることによって経営に携わる社員とそうでない社員を設定することも可能。
- 株式が存在しない
-
代わりに「持分」がある
- 「持分会社」という区分であるため、株式ではなく「持分」が存在する
- 「持分」とは「持分会社の社員の地位」のこと
3.設立するメリット&デメリット
- 柔軟な運営が可能
- 面倒な事務作業が少ない
- 登記の手続きが比較的簡単
- 設立費用が安い
- 意見対立に弱い
- 知名度が低い
- 出資による資金調達が困難
- メリットの解説
-
1.柔軟な運営が可能
自由に決められるものの例- 意思決定のルール
(携わる社員/議決方法・採択の条件/議決権数の決め方など) - 利益分配のルール
(社員ごとの分配率など) - 出資関連のルール
(持分の譲渡や社員の入退社の条件など) - 定款変更のルール
(議決方法や必要な賛成数など)
つまり...- 自社のケースに合った組織作りが可能
- (すべては定款次第)
- 後から変えるのは大変なので最初が肝心!
- (複数名が出資する場合)
2.面倒な事務作業が少ない
株式会社 合同会社 決算公告 義務(年1回) 不要(任意) 株主総会 必要(年1回) 存在しない 解説決算公告と株主総会はどちらも書類作成等の手間が発生します。
これらは行うタイミングが決算月に近いため、少人数の会社では大きな負担になりがちです。注意株式会社のように年1回必ず株主総会を行う必要がないというだけで、会社の意思決定には社員の過半数の同意が必要になります(「過半数」の部分は定款の記載を変えることで自由に変更可能)。
3.登記手続きが比較的簡単
株式会社設立の流れSTEP.1社名を決めるSTEP.2書類作成STEP.3印鑑の発注STEP.4定款認証STEP.5登記合同会社設立の流れSTEP.1社名を決めるSTEP.2書類作成STEP.3印鑑の発注STEP.4登記解説株式会社の「STEP.5」にある「定款認証」が合同会社では不要です。
たった1工程の差ですが、定款認証は非常に面倒な作業なので大きく簡略化されていると言えます。4.設立費用が安い
株式会社 22万円~(雑費込み) 合同会社 8万円~(雑費込み)
なんと株式会社の1/4で設立可能!!
- 意思決定のルール
- デメリットの解説
-
1.意見対立に弱い(社員が複数いる場合のみ)
問題点- 合同会社は出資額に関係なく社員の発言権が一律
- しかも議決には社員の過半数の同意が必要…
- つまり社員同士で意見が対立すると意思決定できなくなる…。
解決策(例)合同会社は自由度の高さが強み!
あらかじめ話し合って定款に記載しておけば何とでも予防できます!- 社員を1人にする
- 最も簡単な解決策は社員を1人にすることです。家族経営の場合は検討してみてはいかがでしょうか。
- 社員を奇数にする
- 割り切れない数にしてしまえば多数決で決めてしまえるので問題ありません。
- 出資額に応じた議決数を付与する
- 「出資額1万円につき1議決権」といった風なルールを決めて定款に記載しておけば発言権を株式会社のように設定できます。ただし、ほかの社員と出資額が同じだと意味をなさないのでご注意ください。
- 業務執行社員をおく
- デフォルトでは全員が経営に携わることになっていますが、意思決定を行う社員(=業務執行社員)を決めて他の社員を経営にかかわらないようにすることも可能です。
複数置くこともできますが、意思決定のしやすさを考えると1人にするほうが無難です。
2.知名度が低い
問題点- 合同会社の知名度は低い
- 法人口座や法人カードの審査への影響はないが…
従業員の募集や信用の獲得で不利になる場合がある。
ただし、合同会社であるという理由で取引を断る企業は少数。こんな場合は合同会社を避けよう!- 信用が重要な業界・事業
- 「どこの会社が提供しているのか」といった部分を注視される機会が多い事業(貸金業やリース業など)を始める場合には不向きです。
どちらの法人形態が適切かを見極めるポイントはこちらの記事で解説しています。株式会社と合同会社を徹底比較
3.出資による資金調達が困難
問題点- 合同会社には株式がない
- つまり上場ができずストックオプションも出せない
以上の理由から合同会社を投資対象にしていないエンジェル投資家やベンチャーキャピタルも多いため、出資による資金調達は難しいです。
また、ストックオプションが出せないのもベンチャーやスタートアップにとってマイナスとなります。
結論ベンチャーやスタートアップは株式会社一択。
4.合同会社に適したケース
- 1人or家族で起業する
- フリーランスの法人化
詳しくは以下の記事で解説しています。

5.株式会社との比較
以下の記事で株式会社と詳しい比較を行っています。

6.必ず役立つ関連情報
株式会社の特徴
株式会社の特徴をわかりやすく解説しています。

株式会社と合同会社の比較
株式会社と合同会社の違いを分かりやすく解説しています。

法人形態の選び方
実際に設立する会社の法人形態(株式会社や合同会社など)を選ぶ際に考慮すべきポイントを解説しています。

会社設立の全手順
会社の設立作業の流れを詳しく解説してます。
